文芸同好会 残照

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残照TOP  [ ジャンル ]   [ タイトル ] 黄泉の国

黄泉の国    竹本祥子

何かが叶ったように
嬉々として口火をきり
もの忘れの苛立ちに
毎晩老けてゆく
魂と皮膚

ラインの指切りに
カッと短気を起こして
広口瓶の底に
顔を覆ったままの
わたしが居る

堕ちるだけ堕ちて
言い訳の巡礼に出る
片方の靴が
土にのめり込み
軽い裏切りに
地団駄を踏む

もう捨てるものなど
何もない
夜明けの来ない
サンセットビーチ
サンダルの忘れ物
いらない物は
雑記帳に記して
だるまさんが転んだ

わたしのいない
空間ばかりを
想像する
今日この頃
地震の痛手と
忘れ物
作られた馳走に
見繕って
腕輪を置く

何の腕輪?
知らない世界へ
導いてくれるから
ついておいで
もうすぐだから

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